これを見ている方は恐らく、「自立支援介護」という言葉は聞いた事あるけど、詳しくはよくわからないという方が多いのではないでしょうか。
この記事では自立支援介護の基本的な考え方や、実際の内容、認知症ケアをご紹介していきます。
目次
自立支援介護とは?
自立支援介護とは、その人の「身体的」「精神的」かつ「社会的」自立を達成し改善または維持するよう、介護という方法によって支援をしていくことです。また、自立性の回復により、人間らしい生活の自由を手に入れることを目的としています。
もう少し噛み砕いて言うと、「ただ単にお世話をするという介護」から「自立を支援できるような介護」に変化していこうということです。
この取組みを通して、実際に認知症が消失したり、胃瘻(ろう)の経口常食化やオムツ外し、歩行再獲得など様々な良い影響が実際に出てきたケースがあり、これからの介護のあり方にもなってきています。
自立支援介護の4つの基本ケア
自立支援介護には成果に直結する以下の4つのケアがあります。
- 水分 1日1,500ml以上
- 食事 1日1,500kcal以上(常食)
- 排泄 排便はトイレにて自然排便(下剤は使わない)
- 運動 1日2kmの歩行
これ4つの基本ケアは互いに連鎖するため、すべてが揃って100%の効果が出ると言われています。まずは下の図をご覧ください。
あくまでも1つ1つの要素は時計回りや反時計回りに作用するわけではなく、それぞれが独立またはセットとなって作用することから、連鎖するという言い方をしました。
これらの要素が全て作用した場合に、
- 失禁の改善
- 歩行改善
- 胃瘻撤廃・常食化
- 認知症改善
といった成果(健康体になる)が出てきます。
自立支援介護 認知症ケアの4原則
このような症状の方を見たことはありませんか?
- 夜になると騒いだり興奮して動き回る
- 週のうち、1〜2回ひどく興奮する
- デイサービスの玄関先で「家に帰る」といって中に入らない
- 今度のヘルパーは物を盗むので油断できない
- 「こぼさないで食べてください」などと言うと、大声で怒鳴り出す
- 皆でゲームをしていたら、いきなり隣の人を殴った
- 隣の人の物をもってきてしまう
- 目を離すとティッシュペーパーなどを食べてしまう
- 「家に帰ります」といって、ずっと昔に住んでいたところに出かけてしまう
タイプ別ケア
身体不調型
自立支援の考え方に基づいた水、食事、排泄、運動のケアを提供する。
環境不適応型
「担当スタッフ」の任命となじみの関係作り。
知的衰退型
状況認知の手助け。
葛藤型
孤独の解消、抑制の中止。
遊離型
「役割」づくり。
回帰型
過去への同行。
一般的に言動の異常からスタートし、タイプ判定をして、それぞれのタイプに応じたケアをするタイプ別ケアがありますが、認知症のケアには他の原則も存在します。タイプ別ケアというのは、そのうちの一つで、残り3つの原則があります。
共にある
一つは、「共にある」ということ。
実際に現場でよくありがちな、ケアをする側がいろいろな異常行動を見たときに「汚いな」「異常だな」という第三者的な評価を下すような態度を取ることが、実は精神を病んでいる人に対して非常に良くないのです。
健常であれば、いろいろな選択肢の中から一つを選択するチャンスが与えられていますが、彼らは一つのことしか選択できなくなっており、その選択も自ら選んでその行動をとるというより、止むを得ず上記のような行動をしてしまうのです。
その事柄に対し「気の毒だよね」という感情を相手に対して持てるかどうかが大事なポイントです。その感情を持った瞬間から、苦しんだり悩んだり苦痛に感じたりという相互の共感し合うような関係ができており、相手への態度が変わります。
それだけで止まるかどうかは別として、そういう変化を見て相手方もまた救われる部分がある。これを「苦痛共同体」と呼びます。「苦痛共同体」ができた状況を「共にある」と呼び、そこで、病んだ人と介護や世話をする人との間に「共にある」という関係を築くことができるのです。
すべからく精神を病んでいる人に接する医師、看護師、セラピスト、介護職、これらの人たちは、精神を病んでいる人たちに対して第三者的な評価を下すような態度を取ってはいけない、「共にある」ということを我々は認識しなくてはいけない (木村敏氏 京都大学精神科名誉教授)
引用(日本自立支援介護・パワーリハ学会)
行動の了解
認知症になった後の行動というのは、その人の全人生の集積した姿であると言われています。また、認知症になったときにどういう行動を取るかはすでに決まっているとされています。
担当する認知症の利用者の今の行動について、これまでの人生歴を細かく見ていけば「こういう人だから、こういうことをやっているんだな」と気が付き、その瞬間にやっている行動は異常ではなくなります。
それが「異常だ」や「不潔だ」「変な人だ」と思えなくなった瞬間に、こちらの態度が変わるため、ケアする側と相手の関係がガラッと変わります。
ケアする側と利用者の関係が変わっていく中で、認知症の症状が消失したり落ち着いてきます。
安定した関係
その人にとって人や物、周囲の環境が頻繁に変わることのないようにすることが、安定した関係を作ります。
つまり、認知症は状況の認知力が落ちているため、まわりの環境が変わることは常にめまぐるしく状況を変えていくことになりますよね。
レベルの高くなった施設の経験から言うと、タイプ別ケア以外の3つの原則が着実に実行されるようになると、それだけで異常行動が消えていくことがある。
さらに、タイプ別ケアにまで行った場合は、認知力の向上を図るようなケアを基本的にやったうえで、残ったものについては個別な対応をしていかなくてはならない。
引用(日本自立支援介護・パワーリハ学会)
自立支援介護の期待と不安
これまで自立支援介護の基本的な内容や方法をご説明してきました。
自立支援介護に期待される事を簡単に言うならば
- 本人のQOLの向上
- 家族やスタッフの介護負担軽減
- 介護度改善
の3つが挙げられるでしょう。ですが、期待とは反面に不安の声もあるようです。内容としては
- 無理な機能訓練が横行するのではないか?
- 重症な利用者さんの自己決定が妨げられるのではないか?
利用者が望まない積極的なリハビリや栄養摂取などに対する不安の声や、現場のスタッフから受け入れられないというような事業所も少なからずあるようです。
自立支援介護がこれからの介護のあり方
自立支援介護はアウトカム評価による成果報酬型(介護状態を軽くできたら報酬を払う)の介護保険制度の完成にむけて重要な考え方です。そしてこれは、介護サービスを提供する事業者だけではなく、利用者さんとその家族にも必要となってきます。
冒頭にもあるように、これからの介護は「ただ単にお世話をするという介護」から「自立を支援できるような介護」というのが国の方針です。
この取組みを通して、利用者の自立性の回復、家族や介護スタッフの負担軽減に繋げる事ができれば、危機的状況にある介護業界に明るい兆しとなるはずです。
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