みなさんは、人生の最期をどこで過ごしたいか、考えたことがありますか?
- 「最期は慣れ親しんだ自宅で過ごしたい。」
- 「家族を自宅で看取りたい。」
このように思っている方も多いのではないでしょうか?
国の調査によると、国民の約60%は自宅で最期を迎えたいと希望されています。
しかし、実際に自宅で最期を迎える人は全体の約15%なのです。
希望と現実に大きな乖離があるということですが、それはなぜでしょうか?
自宅で最期を迎えたいけど、そのために何をしたらいいのか、どんな準備が必要なのか?本当に、可能なのか?と疑問や不安を抱いている人も多いと思います。
そこで、今回は在宅の看取りの現状と、最期まで自宅で過ごすために利用できる医療的サポート、訪問看護についてお伝えしていきます。
目次
【在宅看取りは増えている?】
前述した通り、厚生労働省の調査によると、自宅で最期を迎えたいと希望する人は全体の約60%を占めているにもかかわらず、実際に自宅で最期を迎える人は全体の約15%となっています。
病院などの医療機関で亡くなる方は全体の約75%、最近は介護施設や高齢者住宅などで最期を迎える方も増えており、それらを合わせると全体の約80%が自宅以外で亡くなっているのです。
(引用:厚生労働省)
在宅で最期を迎えたいと望む人は多いですが、病院で亡くなる方が多いという背景には以下のような要因があります。
- サポートできる家族がいない
- サポート体制が不十分といった
また、自宅で最期まで過ごすことが困難な理由として、
- 介護してくれる家族に迷惑をかけたくない。
- 症状が急変したときの対応に不安がある。
といったことも多く聞かれます。
このように、自宅で最期を迎えるためには、ご家族だけでなく、医師、看護師を始め地域で連携し支えるというサポート体制の構築が欠かせません。
地域包括ケアシステムとは
地域包括ケアシステムの考え方は、「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる」ようにすることです。
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されシステムの構築を実現しようというものです。
地域包括ケアシステムが整うことで、在宅看取りは少しずつ増えていくのではないかと考えます。
(引用:厚生労働省)
【在宅看取りをするために訪問看護ができること】
訪問看護にできることは、ご本人様の心身のケアはもちろん、ご家族の精神的なサポートや、介護の相談やアドバイス、居住環境の調整。主治医への連絡、報告、相談をはじめ、薬剤師、介護士、ケアマネージャーなど様々な関係職種の方との連携も行います。このように在宅でお看取りをする際に、訪問看護の役割はとても大きく、多岐にわたります。ひとつずつ見ていきましょう。
①痛みや苦しさなど、辛い症状の緩和、医療処置
痛みや苦しさなど、なるべく最小限で過ごせるよう医師の指示のもと、点滴などの医療処置や内服のサポートなどを行います。
②ご家族の心のサポート
在宅の看取りを支えるご家族の中には、衰弱し変化していくご本人の姿を目の前にすると、
「これで本当に良かったのか?」「家にいて本当に大丈夫なのか?」「これから何が起こるんだろうか・・・」と不安になり、気持ちが何度も揺れ動く事がよくあります。
ご家族の思いを受け止め、不安に対しては今後起こりうることをなどを分かりやすく説明し寄り添いサポートします。
③生活上での困りごとの相談(本人、家族)
飲み込むことが難しくなってきた、トイレに行くことやお風呂に入ることが難しい、など生活上での困りごとの相談にのります。
本人の状態に合わせてどんな方法が最適かを考えサポートしていきます。
④主治医との連携、相談、報告
全身状態を観察、アセスメントし主治医に状態の報告を行います。痛みや発熱、その他対応が必要な場合は、直ちに報告、相談し連携を密にとります。
⑤関係機関、チームとの連携
訪問看護師は、多職種内のコーディネーターとして、中心的な役割を担います。
それは、医療面と生活面の両方から支えれる立場にあり、各職種の橋渡しができるからです。このおかげで多職種チームの中で情報共有を密に行いより適切なケアが行えるようになります。
⑥亡くなった後の家族ケア
ご本人が亡くなった後に、遺族が望む場合は一緒に顔や手を拭くこともあります。
遺族が悲しみの感情や思いを表出できるように努め、思いをしっかり傾聴し、受け止めます。
【在宅看取りをするための準備】
「家で最期を迎えたい」「最期は病院の方がいい」このような思いや希望は一人ひとり異なります。
本人の意志、ご家族の思いを医師や看護師などの医療従事者と一緒に話し合い、意志を確認し合うことが大切です。
そして、医療従事者と十分に相談したうえで適切な医療、介護サービスの体制を整えます。
具体的にどのようなサービスを利用するかは、担当ケアマネジャー、もし入院中の場合にはソーシャルワーカーに相談してみるのがよいでしょう。
【在宅看取りをしたご家族と看護師の気持ち】
当ステーションでも、実際に訪問看護師として在宅でのお看取りに携わっています。
「本人が望んでいた通り、最期に家で過ごせて幸せだと思います。」
「(亡くなった直後)あの時は気が動転してました。でも今思うと、これで良かったんだと思います。」
「看護師さんがいてくれて、本当に心強かった。」これらは、ご家族からの実際の言葉です。
自宅で看取るという経験は、ほとんどの人が初めてで、分からないことが沢山あります。
「どうしたらいいの?」と不安な気持ちになるのは当然です。そんな時、訪問看護師は一番近くで支えになれる存在だと感じます。
また、訪問看護師は、人の人生の最期という大切な時間に携わるとても意味のある仕事だと感じています。
在宅で看取るご家族の中には、「息をすると声が出てて苦しそうだけど、大丈夫でしょうか?」「どうしたらいいか分からなくて、見ているだけなんです。」など、自分は何もしてあげられないと感じてしまうご家族も少なくありません。
このような、ご家族の気持ちの葛藤に寄り添うことはとても大切です。
できる限り、本人の望みに添えるよう、ご家族に悔いが残らないよう、日頃から、本人、ご家族の思いを聴き受け止めることを意識して訪問しています。
多くの人が最期までその人らしく過ごせるよう、サポートするチームの一員、訪問看護師であり続ける事が、必要ではないでしょうか。
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